第2回 水泳部コーチ就任後最初の改革

2017/11/26

対談_柿添・浜上

5年前にトレーニングの内容を見たときに当時の知識からしても非効率だと感じたとおっしゃいましたよね。具体的にどういう練習をしていて、それがどういう観点から非効率だと感じられたのですか?

【浜上洋平】対談記事公開スケジュール

11/25 第1回 筑波大学水泳部から帝京大学の助教に
11/26 第2回 水泳部コーチ就任後最初の改革
11/27 第3回 「泳ぎを直す」ためのアドバイスの四段階
11/28 第4回 練習時間の半分以上を「泳ぎを直す」ために使う
11/29 第5回 指導者の意識の改革
11/30 第6回 技術中心の指導へのシフトの成果
12/01 第7回 大学運動部のリクルートのあり方
12/02 第8回 自分の身体を自由にあやつる

水泳部コーチ就任後最初の改革

川口
5年前にトレーニングの内容を見たときに当時の知識からしても非効率だと感じたとおっしゃいましたよね。具体的にどういう練習をしていて、それがどういう観点から非効率だと感じられたのですか?
浜上
競泳の種目って一番短い距離は50mで速い人だと二十数秒で終わるのですね。一方長い距離だとプールだと1500mになって速い人でも15分前後かかります。私が最初に見学に行ったときも50m専門の人も長い1500m専門の人もいました。当時はその人たちが一緒になって同じメニューで練習していたのです。どちらかというと1500mを専門とする選手のために作られたようなメニューを短い距離の選手も必死にこなしていました。すごく長い距離を1回の練習で泳ぐという、そういうメニューだったのです。
川口
1日の練習時間が2時間ぐらいですよね。その中で200mを何本とかいったメニューをひたすらこなしていたということでしょうか?
浜上
そうですね。200m10本とかそういった練習がアップからダウンまでずっと長い時間入っていました。たまに短い練習が入るのですが、トータルで7000m前後泳いでいましたね。
川口
泳ぎ方に対するフィードバックなども特にされていなかったのでしょうか?
浜上
そのときにはコーチもいなくて学生主体で動いていたのでフィードバックはほとんどなかったようです。もちろん上級生や、ある程度泳力のある部員が下の部員に対して教えるということはあったと思います。

競泳界によくある風景

対談_柿添・浜上

川口
なるほど。そもそもコーチング自体がないに等しい状況だったわけですね。あとは生理学的なトレーニングというのでしょうか、何百m何本という形で身体を追い込むようなトレーニングばかりがなされていて、選手の距離に合わせてメニューを変えるということもなされていなかった、というわけですか。これは日本の水泳のスクールなり部活なりの中での平均的な状況だというふうに考えてもよいのでしょうか?
柿添
短い距離が専門の選手でも長く泳がされるというのが、今、競泳界の全体的な実態なのですよね。とにかくたくさん泳いで何かを得ようみたいなやり方がすごく強いのです。メニューも100mを何十本も耐えるような練習をかなり頻繁にやっています。スプリンターであるとそうでないとに関わらずそういうことをやっているというチームがやっぱ多いとは思いますね。
浜上
多いと思いますね。
川口
そうすると、水泳界の全般的な練習風景と比較して、帝京大学の水泳部の平均的な部分は生理的なトレーニングが中心ということとスプリンターでも長い距離を泳がされるという部分で、平均よりも若干悪い部分はコーチングがないという部分だったということですね。
浜上
コーチングがないというかコーチがいないということですね。
川口
一般的に、コーチがいた場合はどういうことを言ってくれるのですか?
浜上
コーチにもよると思うのですが単純に練習メニューを作成するだけというのが一番多いのではないでしょうか。それ以外の、あとで話すような「泳ぎを直す」という要素が欠如しているようなコーチが少なからず存在しているのではないかと思っています。
川口
なるほど、出発点の状況がよくわかりました。5年前、その状況を見て、最初にどのような改善プランを考えられたのでしょうか?
浜上
まずは専門種目と専門距離を聞いて、種目や距離に応じたメニューを分けてやろうというところからスタートしました。
川口
それは最低限やらなければならない部分ですよね。効果はありましたか?
浜上
一応、効果は出ましたね。今、コーチをやって5年目なのですが、チーム全体でベストが出る率に関してもそれなりに高い値が得られました。昨年と一昨年は、夏の関カレとインカレでのベスト更新率が60パーセントを超えました。これは大学生にとって決して低い数字じゃないと考えています。