第6回 技術中心の指導へのシフトの成果

2017/11/30

対談_柿添・浜上

ちなみに、そのトレーニングメニューを変えたことの成果が今年目に見えてあったという話を聞いたのですが、具体的にはどういう成果として現れたのでしょうか?一番象徴的なのは400mのメドレーリレーとフリーリレーで日本学生選手権の参加標準記録を突破した成果ですね。記録会というのが年に何回かあってその記録会で参加標準記録というタイムを上回ると日本学生選手権に出場できるのです。

【浜上洋平】対談記事公開スケジュール

11/25 第1回 筑波大学水泳部から帝京大学の助教に
11/26 第2回 水泳部コーチ就任後最初の改革
11/27 第3回 「泳ぎを直す」ためのアドバイスの四段階
11/28 第4回 練習時間の半分以上を「泳ぎを直す」ために使う
11/29 第5回 指導者の意識の改革
11/30 第6回 技術中心の指導へのシフトの成果
12/01 第7回 大学運動部のリクルートのあり方
12/02 第8回 自分の身体を自由にあやつる

技術中心の指導へのシフトの成果

川口
ちなみに、そのトレーニングメニューを変えたことの成果が今年目に見えてあったという話を聞いたのですが、具体的にはどういう成果として現れたのでしょうか?
浜上
一番象徴的なのは400mのメドレーリレーとフリーリレーで日本学生選手権の参加標準記録を突破した成果ですね。記録会というのが年に何回かあってその記録会で参加標準記録というタイムを上回ると日本学生選手権に出場できるのです。
柿添
水泳の大会にはそういう参加標準記録というのがあるのですよ。これ以上のタイムを持っていないと大きな大会には出れないですよというシステムです。関東学生選手権にも制限があります。地方の、例えば、東京都の西部大会、南部大会といった大会がたくさんあって、ほぼ毎週ぐらいの頻度でいろんな記録会が行われています。これは誰でも選手登録してあれば参加可能です。そういう所に1カ月に1回とか2カ月に1回ぐらいのペースでみんな参加しています。それで大きな大会には大会ごとに標準記録というものがあります。大学生の場合だと関東学生選手権の標準記録があり、その上に日本学生選手権の標準記録があり、その上に日本選手権の標準記録があります。どこかの記録会で標準記録を突破するとその大会に行けますよっていうシステムになっているのですね。
浜上
それで、今年は400mのフリーリレーと400mのメドレーリレーで日本学生選手権の標準記録を突破できたのですよ。どのぐらいこれが私たちにとって快挙かといいますと、平成5年の創部からこれまで24年間のあいだに一回だけしか突破できてないのですよ。9年前と10年前にフリーリレーとメドレーリレーのそれぞれ出ているらしいのですが、それから10年近く、私が入ってから今年までずっと出られなかったのです。9年ぶり、10年ぶり、それぞれ2回目ですね。400mフリーリレーでは4人合計の記録が12月から7ヶ月間で6.2秒も縮まったのですよ。メドレーリレーも同じくらい伸びました。
川口
それは何%ぐらいの改善なのでしょうか。
柿添
3%ぐらいですかね。
浜上
そのぐらい縮まるのってかなりすごいことなのです。1人で400mを泳ぐのではなくて、4人が100mずつなのですが、4人とも結構伸ばしたのです。12 月からは1人、メンバーが変わっているのですが、そのメンバーチェンジ分の伸びを差し引いても、残りの3人で4.9秒伸びたのです。半年ちょっとの期間で、100m自由形で、3人で4.9秒伸びたというのは、かなり大きな数字だと思います。

7ヶ月の間に52秒が50秒へ

対談_柿添・浜上

川口
大会の記録を超えたかどうかってかなり離散的なメジャーだと思うのですが、一個人の中で自己ベストの時系列を取れますよね。そのグラフを取っていったら、全員半年間で急激に伸びていったのが見て取れるという、そういう感じなのでしょうか?
浜上
間違いなく伸びましたね。
川口
グラフのような形では可視化していないのですか?
浜上
何秒が出たというのはもちろんその都度記録を取っているのですが、グラフにはしていないですね。52秒ぐらいの子がいきなり50秒で泳ぐなど、明らかに、これまでの伸びとは異質の伸びでした。実は前回の12月の試合までは期待するほどの結果は出てなかったのです。そして、12月のその試合が終わった後にトレーニング方法を変えて、そこからの約半年間で一気に3人で4.9秒なので、これは、いろんな要因があるとはいえ、やはり泳ぎを変えようというトレーニングを入れたことの成果だと感じています。
川口
選手の受け止め方はいかがでしょうか? それでモチベーションがかなり上がって雰囲気も良くなっているのでしょうか?
浜上
12月にトレーニングの改革をしてすぐには成果がでなかったのですよね。3月末に冬季公認記録会っていう冬場のメインに据えている試合があって、毎年、冬のピークをそこに合わせてやってくのですが、そこの成績がすこぶる悪かったのです。そのときには選手たちの中でもこの方法でいいのかっていう疑念は絶対あったと思います。でも、もう一回信じてくれ、泳ぎを変えてすぐパフォーマンスに出るわけではないから、とりあえず、この3カ月でやったことをベースにここから6月、7月の試合に向けて、今度は生理学的に身体を追い込む練習を積んで、そこからが勝負だからということを説明して、見事、7月の試合で結果が出たわけです。これまでやってきたことが間違いじゃなかったと部員たちも感じているのではないかと思います。
川口
この成長が続くと目標であった男子3部脱出、今年はいけそうでしょうか?
浜上
間違いなく戦えるポジションにはいますね。女子に関しても、人数は少ないのですが、過去最高順位を狙える位置にはいると思います。