第7回 大学運動部のリクルートのあり方

2017/12/01

対談_柿添・浜上

まず、今年は2部昇格が目標だとして、次の年、そこから、さらに上と言われると、やはり難しくなってくるのでしょうか?そこからはまた別次元の話になりますね。高校生に声を掛けてリクルートしてめぼしい子を集めるということをやらないと、多分、現状では1部には到達できないのではないかと思います。

【浜上洋平】対談記事公開スケジュール

11/25 第1回 筑波大学水泳部から帝京大学の助教に
11/26 第2回 水泳部コーチ就任後最初の改革
11/27 第3回 「泳ぎを直す」ためのアドバイスの四段階
11/28 第4回 練習時間の半分以上を「泳ぎを直す」ために使う
11/29 第5回 指導者の意識の改革
11/30 第6回 技術中心の指導へのシフトの成果
12/01 第7回 大学運動部のリクルートのあり方
12/02 第8回 自分の身体を自由にあやつる

大学運動部のリクルートのあり方

川口
まず、今年は2部昇格が目標だとして、次の年、そこから、さらに上と言われると、やはり難しくなってくるのでしょうか?
浜上
そこからはまた別次元の話になりますね。高校生に声を掛けてリクルートしてめぼしい子を集めるということをやらないと、多分、現状では1部には到達できないのではないかと思います。
川口
今日のような話をちゃんと公開すれば、帝京大学の水泳部に行ってみたいという人も増えるかもしれません。そうやって人を集めることも始めてもいいかもしれないですね。単にトレーニングの内容を変えて速くなってうれしいというだけではなくて、それを知見として人が分かる形で外部に出して、それをマーケティングに使っていく、それで人を採って、大学の水泳のトレーニングの仕方とか人の集め方とかを変えていくというのは、ある種の戦略としてあっていいのではないでしょうか? 
柿添
競泳という競技に対して僕たちの大学はこういう形でアプローチしていきますというのをコミットするというのはすごく大事なことだと思っています。そういう風にトレーニングの方法にコミットしている所って僕が知る限りほとんどないのですよ。先程も話したように、今の帝京大学のやり方が本当は正解かどうかなんか、もちろん分からないわけですけど、それを本来は高校生が知って選べるべきだと思うのです。帝京大学の話を聞いてもやっぱりきついことをとにかくやって速くなりたいっていう子はそれをやっているチームに入るべきだし、高校3年生までやってきて大学では違うアプローチでやってみたいという子はそういう大学に入るべきだと思います。だから、そういうことを帝京がやっていくと面白いと思います。

方針をコミットすることの大切さ

対談_柿添・浜上

川口
柿添くんは以前某有名私立大学あたりを例にあげてそういう話をしていましたね。そこの大学はどういう状況なのでしたっけ?
柿添
そこは全く状況が違うのですよね。
川口
試合に出られないのでしたっけ。
柿添
いや、そこの場合は、大学として競技で日本一を目指すのではなくて、社会で通用する人材をつくることが水泳部の第1方針らしいのです。それを高校生に言わないでリクルートするのですよね。僕もそこの大学から高校生のときに勧誘を受けましたが、そんな話しは一切無かったです。それは非常に問題だと思っています。その大学は入るととても厳しい上下関係があるのですが、そういうことも含めて、やってもいいけど、言わずにやるのはだめだと思うのですよ。極端な話、戸塚ヨットスクールみたいなのは、たしかにやりすぎだけど、こういう形でやっていますということを公言していて、それを大人が選択するぶんには問題ないかなとは思います。でも、子供相手にそれをやるのと、公言せずにやるのは絶対にだめですよね。ちゃんとうちはこういう方針で、こういうトレーニングの方法で、こういうことを目指しています、ということを、コミットする、公言する、というのは、スポーツ界が今後やってかなきゃいけないことだと思うのですよ。今はそういうところが完全に隠されているのですよね。

その大学の場合、競技で1位になることが目標じゃないっていうチームが競技選手をリクルートしているわけですが、これはかなりまずい状況だと思っています。そういうことを、あの日本の私立大学でとても学力的に優秀だと言われている大学の人たちがやっているということが、すごく悲しいのです。「水泳を通して社会で通用する人材をつくること」を目標にするのは構わないけど、ちゃんとそれ言っておかなきゃ駄目ですよね、ということが、その人たちは全然分かっていないし、それを問題にしている人も少ない。僕の地元の先輩が、その大学に入って、実際アンマッチしてすぐ辞めちゃったんですよね。それってとても不幸なことですよね。就職も全く同じだと思うのですが、僕らはこういう方針でやっています、ということを誠実に伝えていくということを、スポーツ界がまずやらなきゃいけないと思います。

川口
帝京大学は指導方針を公言してコミットするのはできそうでしょうか? 選手のリクルートは動くとしたらどういうタイミングで動くのでしょうか?
浜上
いわゆるスポーツ推薦の制度がうちの水泳部にはないので、今の段階ですと、今回のインタビューを含めて周りに宣伝、アピールして、高校生がそれを見て、帝京面白そうだなって来てくれるというのが一番いいですね。
川口
スポーツをするために大学に行く人もいるわけですよね。そっち方面のマッチングを改善するためのWebサイトなんて作ってみてもよいのではないでしょうか?