第2回 フィンスイミングと競泳の違い
2017/07/19対談記事公開スケジュール
7/18 第1回 ワールドゲームズ史上初2競技での代表選出
7/19 第2回 フィンスイミングと競泳の違い
7/20 第3回 技術の言語化
7/21 第4回 日本のスポーツ文化とマルチアスリート
7/22 第5回 指導のあり方
7/23 第6回 大学時代のプレッシャー
7/24 第7回 マルチアスリートは日本のスポーツ文化を変えていけるか
第1回ではワールドゲームズ出場までの道筋を伺いました。今回は具体的にまずは、フィンスイミングやライフセービングと競泳の技術の違いについてうかがっていきます。
「泳ぐ」という点ではとても似ているように見えますが実際のところは大きな違いが…
これは、ある意味、平野さんやこの対談の主催者である柿添くんを象徴するようなキーワードではないかと思っています。平野さんも柿添くんも、30歳を超えてから、いまだに自己ベストを伸ばし続けていて、それぞれの競技で日本代表選手に選出されています。これはもうやみくもに10代のようにスポーツをやっていては到底達成できない領域ですよね。技術をどう考えていくか、どうやってトレーニングを組み立てていくか、そもそもどうやってスポーツ選手としてのキャリアを組み立てていくのか、あるいは普段の仕事とスポーツ選手としてのキャリアをどう両立させていくかということに関して、ものすごくインテリジェンスを駆動して自分なりに考えてかないと、達成不可能なことだと思います。
平野さんの場合は、それに加えて複数の競技を同時に専門にして同時に代表に選出されるという偉業まで達成されています。ご自身では自分のことをマルチアスリートと呼称されているのですよね?
競泳の技術だけではなにもできない
まずは技術のレベルで考えていることからお聞きさせください。競泳から始めてフィンスイミングやライフセービングという方向に進むときに、どういうふうに技術の違いを感じて、それを克服したのか、あるいはそこで得たことを、どう別の競技にフィードバックしていったのか、そういう技術レベルの話を具体的にお聞かせください。
「具体的に」の例として、同じくフィンスイマーである柿添くんと話していて印象的だった説明を一つ挙げさせてください。柿添くんも子供の頃からずっと競泳をやっていて、それで29歳になってからフィンスイミングを始めたわけですね。最初、自分は競泳でドルフィンキックが得意だったからフィンスイミングのキックも簡単にできると思っていた。ところが全然うまくいかない。そこで、よく考えてみると競泳では手の使い方に比べて脚の使い方がそれほど重視されておらず、脚の使い方に関するセオリーの蓄積がないということに気づいたそうです。それで、自分でゼロから水泳における脚の使い方に関するセオリーをつくるところから始めなければ駄目だと気づいたのだそうです。
その話がすごく面白いと思ったんですよね。そういう風に、競泳からフィンスイミングやライフセービングに移ってきて、具体的にこの部分の研究が競泳をやっているだけでは足りていなかったんだなと感じた経験が、何かありませんか?
そうするとしならせるのは自分の足じゃなくてフィンになる。自分の足もしならせちゃうと二重振り子みたいになって動きが大きくなり過ぎるのでむしろ自分の足はしならせないほうがよいということになります。競泳選手は足首を目いっぱいしならせてキックするんですが、フィンスイマーは自分の足首は固めて蹴る、みたいな感覚になります。
習ったものを最初から疑ってかかる
僕はフィンスイミングに参入したときに、右も左も分からなかったので、まずは池口くんが思ってることを全部聞き出すことから始めました。それだけでも足りないと思ったので、彼が他の子に指導してるのを見に行って彼の指導を全部聞いて、彼がこういうこと言ってるっていうのを一度全部取り込んだ。あとはそれを自分でどう変えていくかを考えた。4年前の日本代表のレベルは今よりさらに世界との差が大きかったから、これだけタイムの差があるってことは、理論にもまだ間違ってるところがまだまだたくさんあるんだろうなと思っていました。だから既存の理論の中でどこを変えていけばもう少し進めていけるのかなっていうのを最初から考えていました。そしてそれからずっと考え続けています。
それで一緒のチームに入ったので、フィンスイミングに関する知識の基礎部分に関しては一部ぼくから平野くんに教えてるって感じですかね。
泳ぐことができない衝撃
次回は「技術の言語化」です。コーチングとは何か、そして2人が見てきた競泳界の現状は一体どうなのか。かなり踏み込んでいきます。