第2回 ドリルをやらない練習方法

2018/06/20

対談_柿添・中尾・平野・康大

【中尾駿一】対談記事公開スケジュール

6/19 第1回 序章
6/20 第2回 ドリルをやらない練習方法
6/21 第3回 水を重くとらえる
6/22 第4回 トップスイマーになるとは思っていなかった
6/23 第5回 トレーニングの意識
6/24 第6回 ビート板は持たない
6/25 第7回 ドリルの形よりも意識
6/26 第8回 ドーピングについてと今後の競技種目

ドリルをやらない練習方法

中尾駿一:山陽新聞社所属、2018年競泳パンパシ、アジア大会日本代表

柿添武文:フィンスイミング2013~2018日本代表

平野修也:アクアアスリート

柿添康大:株式会社Vi-King代表取締役COO

康大
インタビュアーの柿添康大です。
中尾
よろしくお願いします。
康大
事前にSNSでいくつか聞いてほしい質問を集めているのでそれも聞かせてください。まずはアスリートとしてのキャリアから聞かせてください。いつから水泳を始めました?
中尾
小学4年生からです
柿添
かなり遅いですね。選手としてのスタートじゃなくて水泳を始めたのがですか?
中尾
習い事としてそこからですね。学校の授業はありましたけど、しかも理由が親友がそこに行っていたので。速くなろうとかなかったですね。両親が水泳やっていたので。競泳選手で。
柿添
まだ中尾君の情報が世にあんまりないですから。初出しのことがいっぱいありますね。
康大
衝撃が(笑)
柿添
水泳の場合3歳以下にはじめましたという人が多いじゃないですか。僕も2歳です。トップスイマーでは小学校4年生から始めましたはかなり遅いよね。
中尾
選手になったのは、中学1年ですかね。中2で初めてJOに出たんですけど。
康大
選手始めて1年でJOに。それ自体は珍しいことではないんですかね?
柿添
いや、当然珍しいですね。だって競技始めて1年で全国大会ですよ?そのときの種目は?
中尾
背泳ぎですね。もともとスプリントは得意で、バッタとかフリーは戦えるレベルじゃなかったですね。
康大
最初のJOの種目は?
中尾
最初は半バックだった気がします。
康大
いつからフリーに?
中尾
大学生になってからですね。一応インカレで結果だすのが部の目標だったので、半フリ、1バック、2バックの中で、何がいいかなと思って。1バックはリレーもあるんで確定として。。ちょうど悩んでたときに半フリと2バックが同じくらいのレベルで。。やっぱり好きな方にしようかなと。
柿添
大学に入ったときってことですか。
中尾
1年目のとき、インカレのちょっと前にどっちにしようかとなって。半フリやって、バックになって、また半フリになって。
康大
いろいろな事情があって?
中尾
速くなる種目が時によって変わって。
平野
ありますよね。今年はバック、みたいな。
中尾
なんでかわからないんですけど。
平野
僕もレベルは違いますけど、4種目ジャパンオープンはでていて、今年はバックとかあるんですよ。つぶしが効くから何かしらでベストがだせるっていう。
柿添
でも、それだったら2バックはいかないでしょ。なんで泳げるんですか。
平野
たしかに。
中尾
1フリは泳がないですね。純粋にバックは、持久トレーニングもしていて。バックは楽なんですよね。フリーはただ泳ぐだけでもしんどいんですけど。エアロビックでも、バックにしようかなと。
康大
有酸素運動か。エアロビクスのエアロか。
柿添
そういう練習もやっているんですね。週3練習、週3バイトっていう噂だけがとても轟いてきてるんですけど。ちょっと普通の大学生のトップスイマーには考えられないですけど。
中尾
間違いではないです。
柿添
バイトはなにしてるんですか?
中尾
バイトは飲み屋です。
康大
働いている時間は?
中尾
6時から10時、11時まで。だいたいOFFの前に入るんですけど。
柿添
それは最早トップスイマーじゃなくて普通の大学生だね(笑)実際のトレーニング回数は?
中尾
スイム週4です。ウェイトの器具は使わないんです。自重トレーニングにさらに負荷をかけてやるみたいな。今だったらおもりをつけて懸垂とか。ただ、今の課題からするとスクワットはいるかなと思っていますけど。
柿添
スタートが飛べないから?
中尾
そうです、おしりが弱いらしくて。鍛えた方がいいって言われたので。
平野
僕もごつく見えるかもしれませんがトップのフィンスイマーの中では細い脚です。
柿添
足みんな鍛えるからね。フィンの世界チャンピオンの選手はレッグプレスを700キロでやっているらしんですよ。500kgが器具のMAXで、足りないからそこに人が3人のっているみたいで。軽自動車があげられますからね(笑)
中尾
僕、あれめちゃくちゃ苦手なんですよ。200kgは上がらないと思います。フィンスイミングにもいるんですか。その動作って。
柿添
単純に、長い距離になると効率もとめるけど、短い距離ならパワーで蹴っちゃう人もいて。最近は韓国も強いんですけど。技術的なところはフィンスイミングは競技人口が少なくて、研究者も少ないのであんまり解明されていないんですよね。なので、あるチームは肉体で凌駕するっていう考えみたいです。ウェイトトレーニングが尋常じゃないらしく。日本代表の選手でも韓国チームの練習に参加してる子がいるけど、スイムはそんなに特別きつくないけど、ウェイトがとにかくきついらしくて。ミドルの選手はレッグエクステンションを5分とかやるみたい。回数じゃないみたい。レース時間分、全部蹴れ、みたいな。死んでも動かせっていう。
中尾
1分はあるけど、ぼくも。5分は。
平野
負荷的にはどうなんですか。
柿添
あげられる範囲ギリギリみたいよ。かなりきついみたい。
平野
足とれちゃいます。
柿添
日本人がいって、2、3週間で足太くなって帰ってくるっていう。
平野
ただ炎症起こしているんじゃないですか。
柿添
ミドルの選手はそういうことやってるみたいですね。足上げ腹筋、レッグカール5分みたいな。
平野
昭和ですね。昭和。
柿添
筋肥大はやるけど、最終的にミドルの選手はそれを維持しないといけないから、そこは根性、痛みに耐えろみたいなトレーニングをやっているみたい。
康大
競泳みたいに理論が発達していると違うんですかね?
柿添
競泳であんまりそういう狂気のメニューって最近はどうなんだろうね?OWSの選手とかは僕らから見ても狂気と呼べるようなことやってるみたいだけど。

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平野
チューブ引っ張るようなトレーニングとかでスプリンターならやるんじゃないですか。この前のinstagramにあげてたのはパドルつけてます?
中尾
そうですね。重かったんで、やりすぎたかなって思いますが。5mくらいしかいかなくて。あれチューブを4重にしてたんですよね。
康大
そういうメニューは自分で考案してやるんですか?
中尾
もともとは5秒泳いで10秒休憩を6セットが、基本なんですよ。
柿添
タバタプロトコルの短い版みたいな。
中尾
そうですね。それを水中用に変化させてます。
柿添
流行りのHIITね。
中尾
よりパワーを出してやりたいなと思ってやってみただけです。
康大
普段の自重トレーニング、どこの筋肉が足りないとかいうことは自分で考えるんですか?
中尾
そうですね。岡山大学にはコーチがいないので。
柿添
週4のスイムはいつやってるんですか?
中尾
基本朝練習です。午後は陸トレですね。上半身週2回。あと体幹1日と足1日。
柿添
週に8回あるんですか?
中尾
そうですね。週に8回。陸トレは自分でやってます。チームのメニューはあるんですけど、それは僕はやっていないです。
柿添
週4スイムはみんなとやって、午後は必要だと思うものをやっているんですね。それはほとんど1人でやるんですか?
中尾
基本は一人ですね。メニューも自分でつくってやっているんです。
康大
大学入ってからそういう方式なんですかね?高校まではどうだったんでしょう?
中尾
高校までスイミングでいた。高校のときはトレーニング場もあったんですけど、陸トレはそんなに本格的にはやってないです。
柿添
高校のとき練習はどのくらいやってたんですか?
中尾
週6ですね。4000~5000mくらい。今は1回あたり3000mぐらいです。
柿添
週に10000mちょっとくらいしか泳いでないってことですね。
中尾
ただ、強度は毎回高いです。ゆっくり長くだらだら泳ぐとかはやらないです。
柿添
一回の練習時間は?
中尾
2時間です。
柿添
時間の割合でいうと、ドリルが何割とかある?
中尾
アップがだいたい、15分から20分くらい。そのあとアジリティっていう、高強度なものが入ります。10メートル何秒でいけるかっていう。飛び込みの練習で。キックとプルを挟んで、メインスイムしてダウンという流れです。
柿添
キックとプルは動き作りがメインですか?強度?
中尾
チーム全体としては動きがメインですけど、メニューを変えるんですよ。僕は絶対、強度を高くします。ルースンを挟まないと続けられない強度でやります。
平野
常にハードはできないもんね。
柿添
アップやったら、あとはずっときついのを短い距離でやっているって感じなんですかね?
中尾
バーっとダッシュして休憩して。もう1回バーっといって。
柿添
じっくりドリルに取り組むってことは?
中尾
僕、ドリルしないです。
柿添
やっぱ天才かな(笑)僕らは長いと練習時間は3時間とっているんですけど、今は動きづくりは1時間半くらいあって、後半はメインで強度高いのっていう感じで。前半は速い動きもやらないし、動かしたい動きをやるのにそのくらい時間が必要だと思ってます。ドリルに時間をさきましょうっていうのは、競泳は少ないと思うけど。フィンの場合は、高強度はケガしやすいですし。そもそもフィンは10分はいてられないんだよね。痛くて。
中尾
なるほど。
柿添
セットごとにフィンは練習を切ってやるんだけどね。競泳だと平気でメインで3000とか5000mとかやるじゃない?でもフィンの場合はセット交代になりますね。フィンを履いてられないので。
例えば100を4本ハードするとチーム交代して、休憩してて。僕らも日本にコーチがいないので。全員が選手兼コーチっていう形です。僕のチームは、僕が他の子にメニュー提供して、指導してっていう感じで行ってます。
それにしても中尾君のトレーニングはかなり特殊だね。ドリルやらないってすごいね。高強度で技術的に変えていくっていうこと?
中尾
僕の練習は全部レーススピードの中でやるっていうことです。レースでできてなんぼだと思っているんで。本当に一番最初の取り入れるときはゆっくりやるときもあるんですけど、だいたいはレーススピードの中で、ひとつのこと意識して身に着けていくっていう形ですね。
康大
高強度の時も改善点を意識してやっている?
中尾
やりますね。だいたい。
柿添
本数はこなさないってことだもんね。メニューってちなみにどんなことやってるんですか?
中尾
直近で、水曜日は、パワーメニューだったんですよ。メニューが携帯にあるかもしれないです。探してみます。
柿添
ドリルをやっていると勝手に思っていたんだよね。大学卒業して30歳超えてベストでてるような人たちは、とにかくドリルで泳ぎ作ってダイブやっておわりみたいな練習メニューの人が多くて。
平野
水中はそんな感じですね。どっちかっていうと陸上で強度的なものを取り入れてます。いわゆるファンクショナルトレーニング、そのあとメインセット。ウェイトトレーニングとファンクショナルトレーニングを組みあわせて、体を動かせるようにしましょうよという感じです。そのあとにスイムにくるっていうパターンですね。
柿添
たぶん、そこにハードルがないんだよ。僕ら凡人は陸でゆっくりやって、陸で速くやって、水中でゆっくりやって、最後に水中で速くやるっていう過程を踏んでいて。
平野
どこまでできているか探りながら、MAXでやってみるという過程を踏んでいる。
柿添
凡人は(笑)
平野
凡人です(笑)
中尾
ドリルしない理由としては、泳がなくてもぼく感覚が変わらないんですよ。水をとらえられないとかないですし。そこもあるのかなと。
平野
それはでかいなぁ。
中尾
それが週4で成り立つ理由の一つかなと。一応これが来る前のメニュー。(画像見せてもらう)
康大
どんなメニューですか?
柿添
3200しかない。25、15、25、25、25。唯一あるのが100を10本1分20秒。これ最後のメニューはやったの?
中尾
やってないです。
柿添
(笑)
中尾
パドル+フィンでやってました。MAX3本。これは回復してからやりました。しかも25です。
柿添
全然3000泳いでないじゃん(笑)
平野
実質1500ぐらいですね。
柿添
そもそもね、100を10本以外、50以下というかほぼ25しかないもん。
中尾
パワーの日の次の日なんですよ。ウェイト次の日の筋肉痛のなかで。
平野
100っていうのは、疲労抜くためのメニューじゃないですかね?
中尾
あ、これは、新シーズン始まったばかりなんで、みんなが今どのくらいのサークルを回れるかをみるためのメニューです。
平野
へーおもしろい。
康大
周りの選手と比べて、高強度やりながら意識の持ち方は違うんですか?
中尾
ぶん回す人が多いですけど、水をしっかりつかんで、かくっていうのが大事じゃないですか。ぶん回すために泳いでるわけではないんで。水をつかむことが第1で。次に、それを維持したままテンポあげられればよくて。それで効率が下がったら意味ないんで。やっぱり高強度のなかでもワンストロークの効率は意識しています。
康大
いきなり高強度でもできちゃうっていうことなんですね。