第6回 ビート板は持たない

2018/06/24

対談_柿添・中尾・平野・康大

みんなドリルのことばっかり興味あるみたいなんですよね。2015年に鹿屋で一緒に合宿しましたっていう、玉山さん。

【中尾駿一】対談記事公開スケジュール

6/19 第1回 序章
6/20 第2回 ドリルをやらない練習方法
6/21 第3回 水を重くとらえる
6/22 第4回 トップスイマーになるとは思っていなかった
6/23 第5回 トレーニングの意識
6/24 第6回 ビート板は持たない
6/25 第7回 ドリルの形よりも意識
6/26 第8回 ドーピングについてと今後の競技種目

ビート板は持たない

6/21 第6回 ビート板は持たない

柿添
みんなドリルのことばっかり興味あるみたいなんですよね。2015年に鹿屋で一緒に合宿しましたっていう、玉山さん。
中尾
あ、コーチの。はいはい。
柿添
玉山さん僕の先輩なんだよね。大学院でやってたからぎりぎりかぶってて。
明治と新潟医療福祉と一緒に合宿してたみたいなんだけど、中尾くんはなんでここにいたの?岡大も一緒にいたの?
中尾
はい。4、5人。
柿添
この時も、メニューみてあちこちフラフラ好きなとこに練習はいってたって書いてあるけど。
康大
すごいな
中尾
ちょっと、顰蹙かいましたけどね。笑
平野
僕も帝京大学で練習するとき、このスタイルですからね。メニューのサークルを一応、参加させてもらっている手前あんまりできないですけど、うまく。
中尾
いらないなって思うメニューもあるんで、それやるんだったら、ちょっと休んで必要な部分をもっと集中してやった方がいいかなと。
柿添
かなり特化してるね。
康大
学生でそんな人はほとんどいないよね。
柿添
たしかにね。
平野
年齢を重ねて、学生と同じことをやってたらだめだってなって、ようやくみんなこういう考え方にきてるところを、すでに高校、大学の時点でやってるんですもんね。
中尾
コーチがいなかったっていうところは大きいと思うんですけど。自分で考えないとどうしようもないので。
平野
基本メニューっていうのは、誰かが考えて?
中尾
学生が作っています。係りですね。
平野
練習メニュー係?
中尾
そうですね。
平野
何人かがまわすの?
中尾
一人です。
平野
マネージャーではなく、選手?
中尾
選手ですね。ある程度知識持っている人が組んでます。3年生ですね。
平野
やっぱそれを中尾くんがやるのは回避したいっていう感じ?
中尾
僕は特殊にやっているので、みんなが速くなれるかっていうとそうでもない気がしていて。
柿添
ちょっと技術的なところに話を戻すんだけど、手首を垂直に水を押す方向にみたいなこと言ってたけど、フィニッシュまでその意識なのかな?ずっと後ろに押している?
中尾
手首の角度っていうより、重い水をかいていれば手首も自然に垂直に近くなってくると思うんですよ。角度っていうか水の重さは最後まで均一に重く掻いてます。
平野
僕も意識的にはですけど、フィニッシュのところはそうしてますね。
柿添
キャッチのときに浮かせようとするっていうのはないのかな?
中尾
ないですね。
柿添
あくまで前に進むことばっかり考えているの?
中尾
そうですね。浮かせるのは…ストレートネックってご存知ですか?あれで上半身を浮かせて、下半身は腰のポジションで。かなりいいらしいですよ。ウクライナのゴボロフ選手のコーチが教えてくれたらしいんですけど、それをやったらその日、日本代表選手がタイムトライアル、みんなタイムがよかったらしくて。
柿添
あごを引いているってこと?
中尾
そうです、そうです。あごというか、頭全体を下げて。僕はもともとやってたんですけど、裏づけられた感じですね。
柿添
だって前でちゃってもなにも得しないからね。特に現代人はその姿勢なりがちだけど。
平野
前に行けばいくほど、下に行っちゃいますからね。なんも意味ない。
柿添
水と空気の抵抗考えれば浮かせてた方が速いにきまってるんだからさ。首の筋肉で水面からだしちゃえば、その分抵抗が消えるからね。
柿添
腰のポジションていうのは何を意識しているの?
中尾
腹圧は入れるじゃないですか。おしりをプカっと浮かせるかんじで。
柿添
骨盤を回しているの?前傾させてるってこと?
中尾
そうですね。これがこの前の。(動画)これが普通の意識してないときで。腰とおしりのポジションをみてもらいたいんですけど。
柿添
フラットだね。
中尾
これがさっきの腰を浮かせてっていうやつなんですけど。
柿添
前傾してるって感じじゃないね。
中尾
お腹の下にボールを挟む意識でやっているんですけど。ちょっとケツあげすぎじゃないかなぐらい感じで。
平野
結局スピードがでれば、体があがってくるからちょうど。
中尾
そうですね。
柿添
どっちかっていうと、後傾の状態って感じだね。
平野
キックに関しては意識してない?
中尾
フリーのキックは、細かく速くっていうのが大事だと思うんで。めちゃくちゃ意識はしてないですけど。テンポが崩れるとおかしくなっちゃうときがあるんで
柿添
キックは速いんですか?
中尾
キックは結構得意です。
柿添
ビート板もって50mのキックは何秒ぐらい?
中尾
ビート板持ってのキックは得意じゃないです。背泳ぎのキックは得意かもしれないです。フリーのキックはあんまりですね。
柿添
ビート板はあんまり持たないってこと?
中尾
ビート板はもたないですね。だいたいノーボードです。
柿添
冷静に考えて水泳の練習でビート板持つ意味がわからないよね。
中尾
僕もあんまりわからないです。
柿添
今考えると意味ないと思う。
康大
ちっちゃいころ水泳習ってた時はやってたけど?
平野
泳げない人は沈んじゃうからそれを支えるためのっていうことですよね。
柿添
考えられるのは、足だけ追い込むんだったら、呼吸は楽にしてたほうがいいから。呼吸はフリーにしておいて、足を追い込ませるっていうためだったらあれでいいと思うけど。技術的にはあの姿勢で実際水泳って泳がないから意味がないと思う。技術的にはビート板キックをやりすぎると、あの姿勢でのキックに特化しちゃうんだよね。
平野
腰落ちちゃうし。
柿添
泳ぐときと違うから。板もったキックは速いけど、スイムに繋がらない人みたいなのは結構発生してて、水泳界の大きな間違いの一つだと思ってます僕は。ビート板をもつ意味が一体なんなのかみんな考えた方がいいと思います。
中尾
ビート板もつと、後ろ重心になっちゃいますよね。何もいいことないです。
柿添
ビート板持つ意味は本当に少ないと思うよね。競泳界はキックって言われたら、すぐビート板もつのが当然のようになってるけど。考え直した方がいい。
平野
意図的に特定の姿勢を学習させるためだったら意味があるかなと。
柿添
でもみーんなやっているよ板キック。ここ最近、僕は声を大にして言ってるんだけどこれ。ちなみに腰を浮かせたほうがいいっていうのは、自分で考えてやっているんだよね?
中尾
はい、自分で考えて。普通にたどりつきました。
柿添
いいに決まってるもんね。浮いてた方がいいっていうのはわかっていて、浮かす方法としてこうした方がいいってわかって、その練習をしているっていうことだよね。
中尾
浮かして、固定するところは固定して、動かすところは動かして。
柿添
すごいそう思うね。必要ないところは動かす必要ないからね。浮いてて、体幹のところだけ固めてて、あとは自由に動かせるっていうのはすごく大事で。何も意識せずにチューブとか引っ張ると、絶対からだごと引っ張るひとがいて、体がぶれちゃう。力入れるために。その癖がついちゃう。スイム中も、動かしちゃだめなんだから、陸でもそれを意識しなきゃいけないんだけどね。
平野
幅は左右にぶれないように泳ぎたいですよね。
柿添
チューブ引っ張るときは重いのを引っ張りたくなるんだよね。陸トレって。重いのやるには体ごと動かさないとひけないから。でも、目的はそこじゃないから、もうちょっとみんながそれを意識してトレーニングするべき。大学生のときもそういうこと考えてなかったから、単純にチューブやったり、疲れたらすごいぶれて引いていたと思うもんね。今は一切そういうことやらないけど。的確な動きで、トレーニングをしないと意味がないから。
平野
狙った動きでできないのに重いのをやって、あがったぜみたいなのは意味ないですよね。
柿添
それは違うなって。スイムも同じだよね。泳ぎを崩してまで、100を何十本を維持する必要があるのかっていう。スプリンターもやったりするけど。意識できてる強度の中でしかやっちゃいけないというか。
平野
悪いクセがついちゃう
柿添
悪い動きを繰り返したら、体に身についちゃう。みんながもう少し意識しないといけないんじゃないかな指導者も。下手なもの繰り返したら、それが身につくからね。自分がやりたい動きのみを強く意識しないと。前回のインタビューに出てきた帝京大学は、ドリルと高強度でやれる本数はやるけど、それ以上に追い込みたいなら、専門外種目で泳ぎなさいっていうことにしてて。泳ぎが崩れるくらいなら、キツさを求めるなら他の泳ぎでやってねっていう形をとってるね。
康大
循環器系への負荷はそれでいいですよね。
柿添
そうそう、でも腕はかくからさ。専門じゃないなら多少泳ぎが崩れてもまぁ問題ないから。どうしてもきついのがやりたいなら、専門をはずしなさいと。
中尾
あとは壁キックとかよくやりますよ。
平野
帝京もよくやりますよね。
中尾
10秒キックの5秒レスト。ノーブレで。
平野
何セット?
中尾
8とかです。きついです。
柿添
純粋に負荷をかける目的で?
中尾
それはそうです。
柿添
それはタイムでやらなくていいんじゃないってこと。負荷を求めるなら、負荷を求めて。タイムを求めると、多少その状況だと泳ぎ崩した方が早いところがでてきて、そういうことやっちゃうから。それだったら、タイムは見えない状況にして、ただ追い込むっていう方がいいと思う。切り分けしないと、技術的な話と体力的な話。循環器系だったりするところとは、ある程度分けてトレーニングしないと、そこが泳ぎを崩す原因だったりとか。
平野
どうなんですかね。泳ぐメニューとしての負荷は。
康大
純粋にそうですよね、って思いながらやっているんですよね?
柿添
大学生でなかなかできることじゃないよね。周りの子に言ったりするの?
中尾
聞かれたりするときもあるので、言いますけど理解してもらえなかったり。
平野
そうだよね。僕らが帝京の学生に言うみたいなことだと思いますよ。監督は理解できるけど。学生は…。
柿添
やっぱりもっと泳いだ方がいいんじゃないって思っちゃうよね。
平野
結局何が根本的なところにあるかというと、ある程度量を泳がないと不安だっていうのがあるんですよね。要は満足感が不安を消し去ってくれているだけっていうのがなかなか理解されない。
康大
丸暗記している学生みたい。
中尾
でも、僕もその意識はもともとありましたよ。週6やっていたんで、練習量減らすと遅くなるんじゃないかって思いました。でもむしろ速くなりました。